ヒット・パレード



「森脇さん!改めてお願いします。もう一度、ステージに立ってライブをやって下さい!」


もう何度この言葉を口にしただろう。それに対する森脇の答えは、およそ見当がつく。


「まだそんな事言ってんのかよ………俺はもうロックから足洗ってんだよ!何回も言わせんな!」


「足を洗うって解散の事を言ってるんでしょうけど、そんなのは関係無いです!再結成とは言いません。もう一度だけでも私達にそのステージを見せて下さい!」


「何を言っても無駄だ。俺はもうロックは演らない!」


「どうしてですか!どうしてそう頑ななんです!」


「俺がそう決めたからだ!
………だからトリケラトプスも解散した!」


「なんですって!」


森脇の口から発せられたその事実に、陽子は驚きを隠せなかった。トリケラトプスが僅か三年間という短い活動期間で解散に至った、その決定を下したのが森脇だと言うのだ。


「いったいどうして!どうして森脇さんから解散なんて………」


あまりに短すぎる三年間という活動期間………その間に森脇の中で、いったいどんな心境の変化があったのか?


「お前には関係無い。もう、俺に関わるのはやめてくれ」


最後にそう言い残し、森脇はカウンターの上に自分の飲み代として紙幣を何枚か置いた後、陽子に背を向けて店の出口へと歩きだした。




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