ホルケウ~暗く甘い秘密~
りこの反応に、上原は意外そうな顔をした。


「あ、知らなかった?春山さん、男子に媚びてるって噂流れてるよ。まあ、大半の人は信じてないけど」

「は?何それ……不快。気分最悪」


靴底に張りついたガムを見るような視線を遠くに投げれば、上原がいきなり笑い始めた。


「言うねー!春山さん、けっこうはっきり物言うタイプなんだね。大人しそうな見た目とはすげーギャップ」

「いや、だってこれは物凄い誹謗中傷だよ。いつ誰が誰に媚び売ったってのよ。クラスで絶賛ボッチライフ送っている私が、自主的に話しかけるほど仲良い人いないってことくらい、みんな知ってるでしょ。嫌味か」

「そこまで豊富な語彙を駆使して、話す内容が自虐って。芸人じゃないんだから」


あまりに楽しげに上原が笑うものだから、りこの怒りも徐々に消えていった。

こんな風に、軽いノリでクラスメートと話したのは、転校してから初めてだ。

ひとしきり笑ってから、上原はそばかすだらけの顔をクシャッとさせ、こう言った。


「なして女子から煙たがられてんのかわからないけどさ、春山さん嫌じゃなかったら、俺のいるグループ来てよ。春山さん、話しやすいから歓迎するぜ」

「え……」


ただiPodを拾っただけなのに、なぜか友情が芽生えつつある。

目を丸くして驚くりこに、上原は「どう?」と畳み掛ける。


「一時期に女子からの視線がさらに厳しくなるかもしれないけど、俺たちのグループを通じて、春山さんの性格を発信していけるっていうメリットがあるよ。それにさ、慣れたって言ったってやっぱボッチより友達いるほうが楽しいじゃん」


笑顔で一人交渉を進めていく様子が、若干玲の姿に被って見えなくもない。

俺様とまではいかないが、グイグイ引っ張る積極性に、りこは若干引いていた。


「いやー、悪いよ。上原くんもごちゃごちゃ言われそうだし……」

「そこは心配しないで!俺、ネットワークは広い方だから、2週間もあれば春山さんのしょうもない噂揉み消せるよ」


心なしか笑顔が黒く見える。
それもまた玲とそっくりで……。


(なんだろう、私の周りにはこういうタイプの人しかいないのかしら)


あれよあれよという間に、気づけば上原はりこの友人第1号を名乗っていた。
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