ホルケウ~暗く甘い秘密~
ブルーバード動物病院裏の森に到着した時には、時刻は午前11時を過ぎていた。
燃えるゴミの袋を持った山崎を呼び止め、りこはトングに挟んでいたチョコレート菓子の箱を突っ込む。
「よかったな」
脈絡のない山崎の言葉に、りこはクエスチョンマークを頭上に浮かべた。
「上原と仲良くなったみたいだからさ。後ろから見ていて安心した」
「あー、そういえば、杉田さんや本田さんと後ろ歩いていらっしゃいましたね」
「おめでとう。友達第1号」
「やめてくださいよ、そのぼっち強調するような表現……」
ふて腐れてそっぽを向いたりこだが、ふと人気を感じ、辺りを見回した。
班員の半分近くは、病院の隣の焼却炉前でゴミを分別している。
少し奥まった、木々の重なるところにペットボトルを見つけたりこは、山崎に声をかけようか迷ったが、そうしているうちに山崎はゴミの分別を手伝いに行ってしまった。
(……まあ、いっか)
ペットボトルは、木陰から少しだけはみ出たところに落ちていた。
ブルーバード動物病院裏は、焼却炉や物置小屋のあるスペースを少し離れただけで、一気に森が広がる。
りこがペットボトルを回収し、振り返った時には、もう病院は見えなかった。
なんとなく気味の悪さを感じ、早歩きでそこを去ろうとしたその瞬間――――――――――
「動くな。春山りこ」
首筋に伝う冷たいなにかと、幼さの残る抑揚の無い声に、りこは息を呑んだ。
「声を出したら殺す」
声の主は、やはり子どものようだ。
しかし、りこの両手を拘束する手は、小さくとも恐ろしく力強い。
この場を切り抜ける方法が考えつかない以上は、へたに反抗して相手を刺激したら、命が危ない。
そう判断したりこは、背後にいる何者かが手首を縛り上げている間、大人しくしていた。
「ふーん、噂には聞いていたけど……。実物は想像以上だ」
乱暴に腕を引っ張られ、よろめきながらもりこは振り返った。
そして視界に入ったのは、金色の瞳を持つ一人の少年である。
ボロボロのTシャツとジーンズを身につけた彼は、どう見ても小学校5、6年、もしくは中学1年生ほどにしか見えない。
(人狼……!)