ホルケウ~暗く甘い秘密~
そのLINEは、朝になって突然届いた。
休日に早起きをしている玲など見たことがないため、りこはとっさに二階にあがり、隣の家を見た。
玲の部屋はきちんとカーテンが開かれている。
肝心のLINEの内容はといえば、父親が熱を出したため、代わりに家事をやってから学祭に向かうとのことである。
(って、家事出来るの?お世辞にも器用とは言えないのに……)
少なくとも料理に関しては絶望的だ。
学祭が終わったあとの予定は決まった。
会える時間が短くなったのは、本音を言うと少し残念である。
玲には絶対に言ったりしない本音だが。
(でも、多分お昼過ぎには来てくれるわよね……)
心なしか足取りも軽く学校に向かったりこだが、黒板に張られたシフトの表を見て肩を落とした。
午後はどうにか自由時間を確保出来たが、その代わりに閉店後の教室掃除の当番になっていたのだ。
それも、石田、森下の女子人気の高いコンビと一緒である。
我慢しようにもしきれなくて、思わずりこはため息をついた。
石田はともかく、森下のことはかなり苦手なりことしては、これはちょっとした罰ゲームにしか思えない。
「わあー、これまた後に響きそうな嫌がらせだな……」
掃除当番の人選を見て、見た目とは裏腹に聡い相模が同情の声をあげる。
「どうする?変わる?」
サラッと尋ねる相模の優しさに甘えそうになるが、りこはぐっと堪えた。
宣言通り、今日と明日のシフトをほとんど肩代わりしてくれた相模に、これ以上甘えるわけにはいかない。
「大丈夫よ、ありがとう」
唐突に、やつれたような声が二人の間に飛び込んできた。
「おはよう」
目の下にくっきりとクマの浮かび上がった上原が、フラフラしながら二人の間に割って入る。
「おはよう。なんていうか、すごいクマね」
もともとの肌の色が男子の中でも白いほうだからか、上原のクマはとにかく目立った。
「昨日久しぶりに撮り溜めていたアニメ見ていたら夜が明けていた」
図書室で仮眠をとってくると言い残し、上原はゾンビのようにノソノソと教室を去っていく
「自由時間入る前に上原くんを起こしに行ってくるわ」
「了解。頼んだ」
学祭が始まるまであと10分。
りこはまだ教室内の微かな変化に気づいていない。