ホルケウ~暗く甘い秘密~
玲からLINEが来たのは、1時を少し過ぎてからである。
隣のクラスにいる枝折も偶然休憩時間に入っており、昼食に誘われたが、りこは断って玲からの連絡を待った。
悶々としながら待っていただけに、余裕ぶるのも忘れて、りこは小走りで正門に向かった。
「りこさん」
愛用のマウンテンバイクにもたれかかりながら、玲は緩やかな微笑みを湛えた。
ジーンズにパーカーという、ごくごくラフな格好だが、彼の美貌の前ではこれくらいシンプルなほうが丁度良い。
(そういえば、まともな私服を見るのって初めてだわ)
意識した途端、心臓が勝手に跳ねはじめる。
大変今更なことではあるが、やはり彼はカッコいい。
「もうお昼食べた?」
さりげなく隣に立つ玲の存在を嫌でも意識してしまい、りこは落ち着かなかった。
「まだ。っていうか俺が料理作れないの知ってるでしょ?」
「ええまあ。でも、世の中にはコンビニという便利なものもあるわけだし」
「お昼時にりこさんと会うんだから、そこは昼飯一緒するのも織り込み済みだよ」
わざわざ自分の名前を会話文に突っ込んできたのには、何か意味があるのか。
玲を好きになってから、あれこれと深読みし過ぎる癖がついてしまった。
(正直、ちょっと息苦しい……)
「おすすめの屋台とかある?」
「うーん、昨日はシフトがびっしり入っていて屋台巡ってないのよね」
「じゃあ、今から巡ろうか」
あまりにナチュラルだったため反応が遅れたが、りこは右手に絡みついた硬い指に目を剥いた。
今まで積もったドキドキが火山のごとく噴火し、血管という血管にマグマが流れていく。
「恋人繋ぎ」
悪戯っぽく微笑む玲に、りこは色々と限界だった。
顔が熱く、今自分がどれだけ真っ赤になっているか想像がつく。
「はいはい、さっさと行こう」
顔が赤いため虚勢をはったところで意味はないが、りこは平気なふりをせずにはいられなかった。
そんなりこを見て、玲はクスクス笑いをこらえようともしない。
周囲からチラチラ見られるのも相俟って、りこは逃げ出したくなった。
「じゃあ、どこから行く?」
「え、ちょっと待ってこのまま!?」
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
慌てて手をほどこうとするが、がっちり指を絡めて、玲は放そうとしなかった。
「ねえ玲、さすがにこれはちょっと……」
「ダメとか言わせない。俺はこうしていたいから」
この一言で、りこは完全に撃沈した。