ホルケウ~暗く甘い秘密~


「なした?(どうした?)」


鋭く問いかけると、電話をかけてきた相手――――緑町の交番勤務の巡査は、困惑した声で言った。


『あの……野球場の裏手で、女子高生が倒れていました。交番まで運んだのですが、いまだに意識を失っていて……。その子、どうやら強姦されたみたいなんです。衣服がめちゃくちゃに裂かれていました』


思わず息を飲む。
強姦事件を取り扱うのはこれが初めてではないが、いつ耳にしても嫌な話だ。


「救急車は呼んだか」

『はい。もうすぐ到着するかと』

「そうか……その子の意識が戻ったら連絡をくれ」


電話を切るなり、深いため息をつく。
今年の白川町署の生活安全課は、受難の年になりそうだ。

コンビニでビールでも買って晩酌をしようと、湯山は商店街方面に車を出した。
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