ホルケウ~暗く甘い秘密~
「セレブじゃなくてリッチかー。言葉を選ぶセンスがあるよ、お前」

「セレブと呼ばれている方々には申し訳ありませんが、なんか嫌いなんです、その単語。やたらとマスコミで使われているからか、安っぽいイメージがあって、品がないもの」

「これは手厳しい。お嬢様は慧眼だな。ちなみに、セレブっていうのは、著名、有名など、名声を表す言葉だったはずだ。それがいつの間にか金持ちを指す意味になっていたんだ」

「それは初めて知りました。前々から思っていましたが、山崎先生って博識ですね」


マスターが運んできたメニュー表をじっくり見つめながら、山崎はサラッと答えた。


「お前ほどじゃないよ」


そして決めたのか、りこにメニューを手渡してきた。


「おすすめは紅茶とケーキ。がっつり甘いもの食いたいなら、パフェがおすすめ」

「決めました。アッサムのミルクティーと、ザッハトルテで」

「おう。マスター!」


席から立ち上がらず、いきなり山崎が階下のマスターに向かって叫んだため、向かいに座っていたりこは、咄嗟に耳を塞いだ。

ほどなくして、マスターが階段を登って来た。


「はいはい、ご注文は?」

「セイロンのストレートとシフォンケーキ。ブルーベリーソースつけてくれ。連れは、アッサムのミルクティーと、ザッハトルテだ」

「はいよ」


マスターが降りてすぐに、山崎はりこを見て、ゆっくりと切り出した。


「それにしても……」

「なんですか?」

「春山って女の子だったんだな」


目をしばたたかせ、その意味を咀嚼してから、りこは眉をひそめた。


「どういう意味でしょうか?」

「今日みたいにはしゃいだり、笑ったりとか、普段しないからさ。もっと機械的というか……けど、今日のお前は年相応の女の子だなーと思って」

「はあ……左様ですか……」


機械的と言われてどこか釈然としないが、ちょうどお茶とケーキが運ばれてきたため、会話はそこで途切れた。

テーブルに並べられていく美味しそうなケーキと紅茶はもちろんだが、りこは皿とカップに目を奪われていた。


「あの、マスター」

「はい、なんでしょう?」

「このカップってもしかして、ジノリ?」


フルーツの絵をあしらった陶器を見て、イタリア発祥の世界的に有名なその陶器のメーカーを口にしたりこだが、マスターの顔はパッと明るく輝いた。
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