戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
まさに掃討戦であった。

何とか心を折られる事なく立ち向かっている大国の騎士達は、敵とは言え賞賛に値した。

その勇気に免じて、逃げる者には刃を向けぬように指示を出す。

しかし。

「乙女、覚悟!!」

戦いを挑んでくる者には、こちらも相応の覚悟を以って応える。

敵の斬撃を受け太刀で止め、すかさず振り下ろしの刃を浴びせる。

敵は勢いで吹き飛ばされ、近くにいた数人の大国軍騎士と共に地面に倒れた。

…馬上から見ると、紅も奮戦していた。

両手に片刃の短剣を握り、低空で羽ばたく鷹のように、戦場を翔けていく。

彼とすれ違った大国の騎士達は次々と斬られ、その心を折られていった。

まさしく疾風。

まさしく魔風。

戦も終盤に差し掛かる頃には、紅の前に立ちはだかろうとする勇気のある者は皆無だった。

…我が軍の騎士達も、獅子奮迅の働きを見せてくれたものの、やはり此度の戦で最も戦果を挙げたのは私と紅だった。

一騎当千。

一騎の兵が千の兵士に匹敵するほどの強さを誇る、という言葉の通り。

気づけば七万からの大国軍は総崩れとなり、撤退する頃にはほんの数百にまで激減していた。


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