戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
乱戦の中、一際激しい戦いをしている者があった。

その中で赤い外套が翻る。

紅だった。

二刀を振りかざし、襲い来る大国軍の騎士達を薙ぎ斬っている。

だが彼もまた。

「むっ!!」

胸に蛇の紋章を持つ騎士に苦戦を強いられていた。

得意の二刀を以ってしても、思うように太刀を浴びせる事が出来ないでいる。

一般の兵が五、私や紅が十の力だとすれば、精鋭部隊の兵士は七から八の力。

一般兵では歯が立たず、私や紅とてたやすく倒せる相手ではない。

たった二百の精鋭部隊とはいえ、我が軍にとっては脅威であった。

「紅!!なるべく精鋭部隊を狙え!!一般兵には戦わせるな!!」

敵兵の血しぶきを浴び、更にその身を真紅へと染めながら戦う紅へと叫ぶ。

…彼ほどの騎士ですら、それに返事を返す余裕はなかった。

勿論私とて、もう一度叫ぶ余裕はない。

…やっとの思いで精鋭兵士を二人倒した。

だがその精鋭部隊の兵士達は、我が軍の一般兵を五人六人と斬っている。

「…貴様らぁっ!!!!」

怒りに我を忘れた。

剣術というよりは怒りに任せて。

その白刃を次々と敵兵に振り下ろしていた。

…この戦が何とか大国軍の撤退で終わる事ができたのは、本当に奇跡と呼ぶに近かったかもしれない。

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