桜の樹のように・・Ⅳ
22歳の頃、先輩美容師に
「美容室を独立経営するので、良かったら、うちの店で一緒に働かないか?」
そう言ってもらえた。

私は迷わず、その先輩の片腕となって働く決意をする。
ひとつの店舗のオープニングは経験した事がなかったし、丁度、働いていた店も辞めたいなと思っていた頃だったので、当時の私にとっては、有難い話だった。

この頃、前に付き合っていた彼氏と別れ、新たな彼氏が出来て全てが新鮮に満ち溢れていた頃である。自分が望む物や形が、それほど頑張らなくても、周囲から勝手に舞い込んでいた・・そんな感じにも似た時期だったので、私は自分の運気の強さすら感じていたかもしれない。

昔、私の名前と生年月日を、ある占い師に見てもらったとき、物凄い強運の持ち主であると言われた事があった。それが、とても嬉しかった。


先輩が作った新しい店でオープニングを迎え、私は、数人のアシスタントに囲まれ「店長」と言う肩書きを貰った。
まだ開店したばかりの小さな店だったので、お給料は大幅に下がってしまったけれど、「店長」と呼ばれる自分が、何だか凛としていたようにも思えた。

何もかもが、私に楽しさと輝きを与えてくれていた毎日だった。


しかし、そんな毎日は、長くは続かなかった。
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