ここの所、私は外出が多かった。

荒木と食事に行くこともあったし、AVの業界で知り合った女の子達と仲良くなり、遊びに行くこともあった。

終電がなくなれば、サウナなビジネスホテルに泊まる事もあれば、クラブで夜通し友達と遊ぶ事も少なくはなかった。

そのせいか、23歳にもなる娘に対して父親がまた外泊や帰宅時間をうるさく騒ぐようになり、そんな父親の愚痴を母親は私の顔を見るたびに言うようになった。

あいもかわらず私の部屋にはTVもなく、電話は子機を引いたけれど、TVを置くことは何故か反対され続けた。

父親は「部屋にTVを置くと部屋にこもるようになって家族と接する時間がなくなるから」と、あくまでも家族とのコミュニケーションのためにTVはリビングだけ、と言う考えなのだ。

そして、母親は、私が辞めてしまった美容師の仕事への復帰を望み続けていて、どこから見つけてきたのか、空き物件を見つけ、そこで自分の美容室をオープンしたらどうかと話を持ちかけてきた。

「大丈夫。自分でやれば自分のペースで出来るし、腕だって、お医者さんはもう平気って言ってるでしょう?お母さんも協力するから、やってみなさいよ。あなたなら出来るわよ」

母親からの過度の期待、
父親の権限の無理なコミュニケーション、
本当はやってる仕事はアダルトビデオの女優、
それを隠し続ける隠蔽工作の日々、
最愛なる良明とは離れ離れになる、

うまくいかない・・何もかもが、また、思うようにならない。

私は、そのジレンマと、戦っていた。

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