今生きている、この場から逃げ出そうか・・

そうすれば、何かが変わるかもしれない。

親の目の届くところではダメだ。

遠くへ、遠くへ逃げ出そうか。

何もかも捨てて、私は、またゼロからやり直せばいい。

アダルトビデオの事だって、都会に居れば、誰かに遭遇して、バレて、私は、さらし者になるかもしれない。

それは嫌だ。自分の中から、抹消しなきゃいけない事なんだ。

ここから逃げ出せばいいんだ。

もう1度、出直すんだ。今度は自分の力で。

そうだ、私も新潟に行こうかな。

良明が生まれ育った新潟で、私もやり直せばいい。

良明とも離れなくて済むし、新潟なら都会から遠いから、親も何も言えないだろう。



ジレンマと戦う中、私の中には、いつしか、こんな決断が出来上がっていたのである。

自分が生まれ育った街からの脱出。


私は、新潟と言う街を調べ始めた。

そして、新潟の就職情報を調べた。


良明が都会から田舎に戻ってしまってから3ヵ月後、私は、猛反対する親の意見を押し切るように、新潟のある街のアパートの契約をし、必要な家具を買い揃え、アパートから通える範囲の就職先を探した。

その為に3ヶ月間、何度も新潟と都会を車で往復した。

新潟は雪国だから車も4WDに買い替えた。荒木に話をしてAVも完全に辞めた。美容師仲間に別れを告げ、親の見送りもない中、私は1人、生まれ育った街から脱出したのだった。

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