桜の樹のように・・Ⅵ

後悔

それから良明に会うことはなかった。

私は新潟から都会に戻ろうかと思ったけれど、親にもタンカを切って家を出てしまった都合上、後戻りができなかった。

私は仕事の休みの日に、東京に行き、荒木と久々に食事をした。

その日は、荒木の家に泊まらせてもらう事にする。以前も何度か終電がなくなって、どこも泊まるあてもない時に、荒木の家には泊まった事があるから、なんの心配もしていなかった。

荒木の部屋に泊まったからと行って別に荒木とセックスをするわけではない。

荒木の部屋のダブルベッドでお互い背を向けて寝る。ただ、それだけだった。

この日は食事をした後、私を部屋に残し、荒木は遊びに出かけた。そして夜中の2時頃に帰宅した荒木は女の子を連れて帰宅した。

私は、もう寝室で寝ていたけれど、玄関のドアが開く音で、目を覚ます。

でも、ベッドにもぐりこんだまま、ゴロゴロとしていた。

荒木と、その女の子は寝室の隣のリビングで、どうやらセックスをし始める。
女の、あえぎ声が寝室にまで聞こえて、うるさかった。

でも、この環境に、とりたてて何も思わなかった。

好きにすればいい。

あの女が荒木とどういう関係でも興味はない。

ただ、私は疲れただけ。

眠りたいだけ。

うまくいかない。

欲しいものが手に入らない。

たとえ欲しいものが手にはいったとしても

それは、まやかしで

錯覚で・・・・


すぐに無くなる。

私には何も残っていない。

私を愛しぬいてくれる人は、いないのかな・・・



そんな事を考えながら、私は眠りについた。
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