桜の樹のように・・Ⅶ

不倫

私は、レイプ未遂の翌日、何事もなかったように会社に行って働いた。
自分の中で、さほどトラウマになっていなかった事に自分で驚いた。おそらくセックスなるものがAV女優やら風俗を経験したせいで、非常にラフなものになっていたのかもしれない。
実際にAVでレイプ物を撮影したことがあったし、そんなものと感覚がオーバーラップしていたのかもしれない。
傷は少しアザになった程度だったし、どこかに訴えたところで、自分がAV女優であったことを晒されるのが嫌だった。
だから私は、普通の日常と同様の時間を過ごすことにしたのだ。

それから数日経ったある日の事、新潟で知り合った女友達が私の部屋に遊びに来る事になった。
その子は、好江と言って、東京から冬になるとリゾートのアルバイトをする為に新潟にやってくるフリーターの女の子だった。
彼女も私がバイトをしていたスキー場に勤務していたので浩司とも知り合いだったが、彼女は私の周りで唯一、浩司を苦手としていた子だった。

「なんか、インスピレーションかな。私、あの人を皆、いい人って言うけど嫌いなんだよね」

好江は、よく私に言っていた。

好江は冬のバイトが終わり東京に帰っていたが、たまたま東京のバイトが休みになったと言って遊びに来たので私は好江と共通の知人も何人か招待して鍋の用意をする。

好江は夕方の5時くらいに、私の家に来た。

すると好江と一緒に、1人の男が我が家にやってきたのである。

その男は、剛志と言って、やはりスキー場でバイトをしていた男。
年は私よりも5歳上で、地元で、観光客向けの飲食店を営む家の長男だった。
この剛志もスキーのインストラクターをしていたが、私は、ほとんど話をしたことがない。
すでに結婚していて、非常に愛妻家で、仕事を終えるとすぐに帰宅してしまう。
そして何よりも、口数も少なく、硬派なイメージがあったので近寄りにくい雰囲気もあったからだ。
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