紫陽花と君の笑顔


 番号を、恐る恐るタップする。


 数回呼び出し音がなったあと、それは特有のアナウンスに切り替わり、その番号が誰のものでもないことを告げる。




 ――やっぱり、舞桜だ。




 確信めいた何かを感じ取り、歩くことを中断。


 近くに出来た木陰でメニューを呼び出し、留守電に何か登録されていないか確認する。




 ……あった。




 羽化を成功させた蝉の煩い泣き声を背に、俺はそれを静かに耳に当てた。


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