君とさよならの時間 ~大好きの涙~



 あいうえお、とスラスラと書いてから「先生、はい」と言って紙を渡す。





「……っ」




 その紙を見て、先生の眉がピクリと動く。



 え…?なに?どうしたの?先生。




「うん。いつも通りだね。力の強さは変わってないよ」


「……そ、ですか」





 嘘だ。先生は嘘をついている。


 生まれてからずっと、私を担当する先生は藤井先生だ。変わったことなんて一度もない。


 だからこそわかる。先生の今の笑顔、絶対に作り笑いだ。





 でも、どうして?どうして作り笑いなんてするの?




 それじゃあまるで、私の力が弱くなった、って言ってるみたいじゃない。


 確かに弱くなったのは認めるけど、先生が気にするレベルまで…?





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