僕らが大人になる理由


……は?

なにこいつ!?

なに!?

え、何この状況!?

むしろ俺の方が大パニックだよ!

バカなのなんなのこいつ!?


やばい、心拍数あがってる。

おい、まじかよ。童貞じゃあるまいしなんでこんなことくらいで。中学生かよ。


「ちょ、真冬、落ち着けって…」

いや俺も落ち着けって。

「真冬、一旦離れ…」

背中にまわった腕をはがして、真冬の頬に手を添えて顔をあげさせると、真冬の頬は熱を帯びていた。すこし汗もかいてる。髪が頬に張り付いているのが、光ったときに一瞬見えた。


…やばい、と思った。

今までの俺だったら速攻でヤってる。

キスしてる間に服を脱がして、片手で下着はずして、触り倒して。


やばい。

やばい、まずい、やばい。


まさに理性との戦い。



「真冬、大丈夫か」


真冬は、手を両手で覆って震えていた。

俺は、それを真上から見おろしながら、理性をなんとか保って真冬の肩に手を回して抱き起こした。そして、真冬の両耳を手で塞いでやった。


「ほら、これで怖くないだろう、視覚聴覚ばっちり遮断だ」

「………はい? なにか喋りました?」


塞いでるんだから聞こえなくて当たり前なのに、俺はバカみたいに話しかけた。

部屋が白く光るたびに震える真冬を、抱きしめてやりたかった。

俺はその体勢のまま、5分ほど過ごした。

すると、だんだんと雷の音が小さくなっていった。


「真冬、大丈夫か」

「うう…」

「真冬、もうだいぶおさまってきたから」

「嘘ですやん…」

「なんだその話し方。本当だって。手どけろって。大丈夫だから」

「大丈夫じゃないですやん…」

「大丈夫だって」
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