僕らが大人になる理由

顔を覆っている両手をはがそうとすると、真冬はまた震えた。


「だいじょうぶじゃ、ないです…」

「え…」

「だいじょうぶじゃない、あたし、ぜんぜん、こんくんが、つめたいからっ…、あたしがすきでいることはめいわくなんだ…っ」

「………」

「だったら、謝りたいなっ…、好きでいることが迷惑なら、謝りたいなっ…、あたし、すぐには諦められないけど、謝ることはできるよ…っ」

「は」

「できるよっ…」



――――なに、言ってんの? こいつ。


なにしてんだよ、紺野。

こいつに、こんなこと、言わせて。

好きでいてごめんなさい?

本気でそんな風に思ってるの?

どんだけ健気なの?

お前が謝るようなことをしたの?



自分のことを好きになってくれない人を好きになることは、謝らなくてはならないことなの?



「なん…なんだよ…」



真冬の手を塞いでいた手を、ぱたりと膝上に落とした。

それから、顔を覆っている真冬の手を無理矢理はがして、目を合わせて怒鳴った。


「良い子ちゃんすんな! バカかお前は腹立つな!」

「ひいぃっ」

「由梨絵に嫉妬したんだろ、それくらいで自信なくしてんなよ!」

「う、うう…」

「謝る? 何に? 真冬は謝るようなことしたのか?」

「し、してない」

「だったら謝るな! 俺は自分の何が悪いかが分かってないのに謝るやつは嫌いだ! そういうやつは一番反省してないんだ!」

「ひ、光流君…」

「あーもう! お前俺のこと好きになればいいのに!」

「………へ?」

「お前俺のこと好きになれ!」
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