僕らが大人になる理由




「ここで培ったなにかを、将来に役立ててもらえたら僕も本望だよ」




…しかし、その言葉を聞いた瞬間、笑顔が引きつった。
・・
将来という二文字の言葉が、ずしんと重くのしかかった。

楽しくて、苦しくて、毎日が目まぐるしくて、いつの間にか逃げてしまっていたこと。



…ここに来た動機は、正直親への反発心がほとんどだった。


あたしが社長の娘で、金持ちで、だったらなんだっていうの。

親の評価が一生あたしに付き纏うっていうの。

あたしがどんな風に生きてきたかは、全く評価されないっていうの?


…そんな思いが爆発して、全てが受け身だった自分に嫌気がさした。


社会はこんなに広いのに、どうしてあたしには選択肢がないんだろう、なんて、今まで疑問にすら感じなかったのに。

何もかもがそこに用意されていて、最初から選択肢なんてなかった。それが当たり前だと思ってたから。


だから、与えられないということが、こんなに怖いなんて知らなかった。


大人になることが、こんなに怖いなんて、知らなかった。

…だから、自分のできることを探したかったんだ。


どこでもいい。

誰のためでもいい。

あたしも誰かに何かを与えたい。

自分から与えなきゃ、与えられないんだって、それが当たり前なんだって、やっと気づけたから。



なのに、あたしはなんにも先のことを決めていない。見つけていない。
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