僕らが大人になる理由


「あら、意外とまだ人がいるんですね」

「ほんとだなー。まあこの公園広いし結構有名だしな」


翌日、21時30分。

紺君を除いたメンバー合計10人で、お花見にやってきた。

キッチンやホールの人も光流君が適当にメールを送って誘ったみたい。

ブルーシートを広げて、コンビニで大量に買ってきたつまみやお酒、スナック菓子(全て店長のおごり)を片っ端から開けていった。

もうすぐ5月だというのに、サラリーマンや学生などで、公園は結構賑やかだった。

野球試合も軽々できるくらい広いこの公園には、満開とはいえないものの、美しい桜がまだ咲きほこっていた。

真っ黒な闇の下、外灯で照らされた白い桜が、あたしたちを優しく囲んでいる。

泥酔しきったサラリーマンの声も、はしゃぎ過ぎてる学生の声も、なんだかいい感じである。

初めての夜の宴会に、あたしのテンションも最高潮に達していた。


「真冬、お前はすごい。オレンジジュースで雰囲気酔いできるとは」

「いやあー、もう、楽しいっすよー」

「紺ちゃん来れないのは残念だったけどな。まっ、食え食え」

「わーい! ジャーキー好きーい」


光流君が口元に持ってきてくれたジャーキーにぱくっと食いついた。

けれど、他の女性のアルバイトさんからの冷たい視線を感じ、あたしはすぐに光流君から離れた。

そ、そうか。やはり光流君目当てで今日の飲み会に来た人もいるのか…。そしてやはりバイト先でもモテてるのか…。

急に素っ気なくなったあたしを不思議に思ったのか、光流君があたしの服を引っ張った。


「なんだよー。テメー俺様から離れるとは何様のつもりだ。あ?」

「いやいやいやいや…空気読んでくださいよ光流様…」


あたしは光流君の手を払って、シートの端っこの方に逃げた。

ほろ酔い気味だった光流君は、『なんだよー俺をふるのかー』とぼやいていたけど、すぐに他の女の子と楽しく飲みだした。


…ああ、ここに紺君がいたらなあ。

今、何してるんだろう。

美人な彼女と、イチャイチャしてるんだろうな。
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