僕らが大人になる理由
そうだよね。紺君副店長だし、稼いでるし、高級料理店とか予約しちゃってさあ、今頃夜景とか見てチューしちゃったりしてるんだろうな。
うわー何それすごい嫌だ想像しなきゃ良かった萎える…。
あたしは、コップに入っていたオレンジジュースをぐっと飲み干した。
紺君があたしに振り向く可能性って、1%でもあるのかな…。
「桜野さん?」
「へ」
急に視界が少し暗くなったと思い見上げると、あたしの後ろに2人の女子大生――バイト仲間のお姉さんが立っていた。
この人たち、そういえばもの凄く光流君のこと大好きな人たちだ。
1回休憩が被ったとき、あたしをガン無視して二人で延々と光流君の魅力を語っていたのを覚えている。
まさか、呼び出してしめられる…?!
と、思ったけれど、話はもっと穏やかなものだった。
「ごめん、あのさ、酔いすぎちゃってる人いるからさ、コンビニで水買ってきてくれないかな?」
「あ、全然大丈夫ですよ」
「本当!? ごめんね~ありがと」
「あ、じゃあ、行ってきます」
あたしがどくやいなや、彼女たちはシートの上に上がりこんだ。
…なるほど。光流君と同じシートに入りたかったのか。それならそうと言ってくれればいいのに。
あたしは少しむっとしながら、コンビニに向かった。
でも確かに光流君は泥酔しきっていて、あのままじゃちょっと危ない気がする。水は必要だ。
しかし、光流君のどこがいいんだろうな。確かに整った顔をしているけど、全力でチャラいのに…。
本人いわく現在彼女0、キープ10人、大人な関係なのが4人いる、と言っていた。
あんなにシフトいれといて、一体いつ彼はデートをしているんだろう。マメな人だ。
広い公園を斜めに突っ切って、近くにあったコンビニに辿り着いた。
1リットルの水を1本と、一応エチケット袋的なものも買った。