僕らが大人になる理由
「…紺君のバカ!」
「…………」
「…あたしは、紺君に、…興味津々なのに」
悲しい。
好きな人が、世界をそんなに冷たい瞳で見ていることは、悲しい。
だって好きな人には、いつだって幸せでいてほしいし、色んな人に愛されていてほしいし、色んなことを愛していてほしいから。
紺君は、本当はすごく優しい人なのに、どうしてそんな風にストッパーをかけているのだろう。
まるで何か欲することが彼にとって重罪なことみたいだ。
そんなの、間違ってるよ。
「…紺君のバカ」
あたしは、もう一度呟いて、紺君を一度も見ずに、部屋に入った。
それでも紺君が唯一探してるものをあげたくて、借りたDVDを毛布に包まりながら一本観た。
紺君が、たとえ喜んでくれなくても、迷惑だって、思ってても。
…そういえば、1人でDVDを観ることは小さい頃からよくあった。
母親はあたしに全く関心が無かったから、いつも自分の部屋で独りぼっちだった。
だからあたしは、知ってるんだ。
無関心が、どれだけ残酷なのかってことを。
どれだけ人の心を、暗くさせるのかってことを。
…静かに流れた涙は、映画が怖かったからなのか、それとも、悲しかったからなのか。
「あら、真冬ちゃん、瞼が腫れてるわよ…」
「へっ、あ」
「どうしたの? 誰に泣かされたの? 光流? それとも光流? やっぱり光流?」
「姉さん光流君脅えてます脅えてます」
次の日。
久々に3人の休憩が被り、あゆ姉に昨日泣いたことがバレてしまった。
必死に顔を隠したり、紺君に会わないようにしていたのに。