僕らが大人になる理由


「…紺君のバカ!」

「…………」

「…あたしは、紺君に、…興味津々なのに」


悲しい。

好きな人が、世界をそんなに冷たい瞳で見ていることは、悲しい。

だって好きな人には、いつだって幸せでいてほしいし、色んな人に愛されていてほしいし、色んなことを愛していてほしいから。

紺君は、本当はすごく優しい人なのに、どうしてそんな風にストッパーをかけているのだろう。

まるで何か欲することが彼にとって重罪なことみたいだ。

そんなの、間違ってるよ。


「…紺君のバカ」


あたしは、もう一度呟いて、紺君を一度も見ずに、部屋に入った。

それでも紺君が唯一探してるものをあげたくて、借りたDVDを毛布に包まりながら一本観た。

紺君が、たとえ喜んでくれなくても、迷惑だって、思ってても。

…そういえば、1人でDVDを観ることは小さい頃からよくあった。

母親はあたしに全く関心が無かったから、いつも自分の部屋で独りぼっちだった。


だからあたしは、知ってるんだ。

無関心が、どれだけ残酷なのかってことを。

どれだけ人の心を、暗くさせるのかってことを。



…静かに流れた涙は、映画が怖かったからなのか、それとも、悲しかったからなのか。





「あら、真冬ちゃん、瞼が腫れてるわよ…」

「へっ、あ」

「どうしたの? 誰に泣かされたの? 光流? それとも光流? やっぱり光流?」

「姉さん光流君脅えてます脅えてます」


次の日。


久々に3人の休憩が被り、あゆ姉に昨日泣いたことがバレてしまった。

必死に顔を隠したり、紺君に会わないようにしていたのに。
< 56 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop