未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
仕事をするようになり、家に帰るのは遅くなりがちだし、ちょくちょく出張する事もある。兼続と一緒に。

それ自体はどうって事はないのだが、ひとつだけ困る事がある。それは、小松と接する時間が減った事だ。“接する”と言う言い方も何だが、正にそれではある。

さすがに仕事の時はそれに集中するようにしているが、それ以外の時は、はっきり言って俺の頭は小松の事で一杯だ。

小松は、知れば知るほど愛おしくなる。基本的には俺に従順な小松だが、意外に怒りっぽいところがあり、俺がからかったりすると、すぐにプッとほっぺたを膨らませたりする。その顔がまた何とも可愛くて、俺は何度もそれをしてしまう。

小松は夜の方もだいぶ慣れて来たようで、最近はむしろ積極的でさえある。まだ子どものような顔をしているのに、時にはドキッとするような事をしてくれたりで、そのギャップがまた堪らない。


なんて事を考えたら、もう会社になどいられない。やり掛けの仕事はあるが、明日でいいだろう。俺はさっさと書類を仕舞い、秘書に帰りの車を頼んだ。



「お帰りなさいませ」


家に着くと、いつものように爺やと小松が俺を出迎えてくれたのだが、何かいつもと様子が違う。何がかと言えば……普段はあまり笑わない爺やがニコニコしており、小松はと言うと、頬の辺りを心なしか赤く染め、目に落ち着きがない。


「どうした? 何かあったのか?」

「はい。それがその……」


小松に向かって聞いてみたが、小松は更に顔を赤く染め、口ごもるばかりで要領を得ない。仕方なく爺やに向かい、「何かあったんですか?」と聞けば……


「おめでとうございます。小松さまがご懐妊です」


と爺やは言った。

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