未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「何をニヤニヤしてる?」


会社の役員室で、向かいに座る兼続からそう言われ、俺は我に返った。前の晩の小松を、というか小松との淫らな行為を思い出し、つい顔がニヤケてしまったようだ。


「順調みたいだな?」

「まあな」

「そうか。しかし俺の話も聞いてくれ」

「聞いてるさ」

「本当か? 繰り返すが、今回、俺が考案した新規事業はなかなかのものだぞ。成功すれば膨大な利益を会社にもたらす。ただし失敗した時の損失もデカイけどな。このプロジェクトを進めるには担当の役員が必要だが、ビビッて誰も引き受けてくれない。社長の織田さんに直接かけ合ってもいいんだが、出来ればそれは避けたい。常務のおまえが引き受けてくれれば何も問題ないんだ」

「いいよ」

「実務は俺がやるとしても、担当役員にはそれなりの仕事がある。今までろくに仕事をしなかったおまえには厳しいだろうし、プライベートが何かと大変なのもよく分かってる。しかしそこを何とか……って、えっ?」

「だから、いいって言ってるだろ? 俺が担当してやるよ」

「本当にいいのか?」

「ああ。その代わり、色々教えてくれよな?」

「それはもちろんさ。へえー、どういう風の吹き回しだ?」

「みんなが必死に働いてるのに、俺だけ遊んでちゃ申し訳ないだろ? そう思っただけさ」


こうして俺の、この会社では事実上の初仕事が出来た。特に気負いとかは感じないが、何かこう、体の内にエネルギーがみなぎっているような感じがする。気分も爽快だ。今までの俺とは雲泥の差があり、まるで生まれ変わったような気分だ。

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