未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
小松も初めは同席していたが、気分が悪くなったため自分の部屋に戻っている。最近悪阻が始まるようになり、可哀想に食べ物もろくに食べられないらしい。


中年でいかにも頭が切れそうな石田弁護士は、爺やが手渡した何枚かの資料、おそらく小松の診断書や俺達の婚姻届などだと思う、にサッと目を通し、顔を上げると、


「問題ありません。故、真田幸隆氏が遺された遺言書の条件は、全て満たしている事を確認しました」


淡々とした調子でそう言い、我々一同はホッと安堵の溜め息を漏らした。


その後、相続する財産の内訳や、相続税などの話を聞かされ、お開きとなったのだが、立ち上がった石田弁護士に、俺は小声で声を掛けた。


「すみません。二三お聞きしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

「はい、いいですよ」


俺は母達みんなが部屋を出るまで待ち、石田弁護士に座ってもらい、自分もその正面に腰を下ろした。


「もしもの話なのですが……」

「はあ」

「この後、その……」


うーん、いざとなると言葉にしにくいなあ。もしもの話と言っても……


「もしも、ですが、離婚をしたらどうなりますか?」

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