未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
小松は、2週間ほど前からこの屋敷で働くようになったらしい。2週間前と言えば、ちょうど父の遺言状が元で爺やや親戚の連中と揉めてた頃で、だから俺は小松という新しいメイドが来た事に気付かなかった、と言うより気に留めなかったのだろうと思う。

小松は地方から一人で上京し、ここに住み込んでいるらしい。いわゆる夜回りは、住み込みの使用人が交代で行っているのだそうだ。初めて知ったのだが。


「ところで、女性に年を聞いたら失礼かな?」

「いいえ、二十歳です」


小松は胸を張り、誇らしげな顔で即答した。


「なるほど。確かに子どもじゃないね?」

「そうです。あの、信之さまは……?」

「僕かい? いくつぐらいに見える?」

「そうですね……」


小松は首を傾げ、黒目がちの大きな目でジーっと俺を見て言った。


「40歳ぐらいですか?」

と。それを聞いた俺は、ちょっとショックだった。


「そんなに老けてるのかな?」

「違いましたか?」

「ああ。34だ。と言っても、君にしてみれば大した差ではないんだろうな?」

「そんな事はありません。ただ、旦那さまは落ち着いてらっしゃるから……。ごめんなさい」

「いいさ、それは時々言われるし。ただし、“旦那さま”はナシな?」

「すみません、信之さま」

「うん、それでいい」


14歳違いか……
なぜかそれが気になる俺だった。

< 18 / 177 >

この作品をシェア

pagetop