未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
えっ? そうなのか?
小松の事をか。うーん……

あの子は可愛いんだよなあ。何て言うか、フランス人形と博多人形を足したような感じかな。
それでいて表情はクルクル変わるし、そう言えば話し声も耳に心地良かったと思う。

頭は小さくて、髪の毛はふわふわで柔らかだったよなあ……

自分の手の平に目を落とすと、廊下で怯えたあの子が俺に抱き着いた時、そっと彼女の頭に手を触れた時のその感触が、ついさっきの事のようにまざまざと甦った。


「おい、大丈夫か?」


兼続の声に顔を上げると、彼は心配そうな、それでいて呆れたような、そんな顔つきで俺の事を見ていた。


「何がだ?」

「何がじゃないよ。顔はますます赤くなるし、目はとろんとしてるし、終いには手を見つめて物思いに更けるし、今のおまえはまともじゃないぞ?」

「そ、そうかなあ……」

「ああ、普通じゃない。というか、いつものおまえじゃない。その子、そんなに可愛いのか?」

「そりゃあ、もう……って、俺、そんな事言ったか?」

「あはは、やっぱりな。口には出してないが、言ったも同然だよ」

「そうなるか?」

「そうなるね。女の事でそんな風になったおまえは初めて見たよ。いい傾向ではある」


俺自身、こんなのは初めてだ。一人の女性をこんなにも意識するのは……

いい歳をして恥ずかしいと思いつつも、自分にもそういう一面があったと知り、正直嬉しくなって来た。兼続にはもっと褒められるかな、なんて思ったのだが……


「しかしメイド相手じゃな……」


と言われた。

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