未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
俺は兼続の言う意味が分からず、ポカンとしていた。


「そのメイドって若いんだろ?」

「あ、ああ。まだ二十歳だそうだ」

「なるほどね。若いメイドから“ご主人さま〜”なんて呼ばれたら、誰だって萌えるさ」

「もえる?」


ますます分からん。兼続は何を言いたいんだろうか……


「そう。萌える、だ。男はコスチュームに弱いからな。メイドとか看護士とか、あるいは制服を着た女子高生とかな。俺だっておまえの家で本物のメイドを見た時、かなりドキドキしたもんな。若いメイドは居なかったけど。それが若くて可愛いとなれば、堪らないだろうよ」

「そうなのか?」

「そうさ。だから気にする事はないが、そういうのではなく、きちんと女を愛したらどうだ?」

「愛?」

「そう。つまり恋愛だな。分かるだろ? 俺の言う意味」

「あ、ああ……」


ようやく兼続の言う意味が分かった。つまり、俺が小松を意識するのは、彼女が若くて可愛いメイドだからで、そのコスチュームに“萌えている”だけだと、そういう事らしい。

だが、それは違うと思う。

なぜなら、俺は物心ついた頃からメイドを見て来たから、あのコスチュームは見慣れている。現に今まで“萌えた”なんて事はただの一度もない。小松に出会うまでは……

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