未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「運転手さん、車を停めて!」

「は、はい」


その意外な人物は、小松だった。ベージュのコートを着て、手提げ袋を手に提げ、歩道を足早に歩く女性が目に止まったが、それは正しく小松であった。

買い物か何かだろうか。いや、それはおかしい。確か屋敷の買い出しは専用のバンでまとめて行っているはずだ。


「僕はここで降りますから、先に帰ってください」

「急用でございますか? 私はここで旦那さまをお待ちします」

「ちょっとしたヤボ用さ。いいから、帰って」


小松を見失ってはいけないので、運転手とのやり取りもそこそこに、俺はさっさと車から降りた。小松の後を尾けるためだ。もちろん小松がどこへ、何をしに行くかは分からないが、何やら嫌な予感がするのだ。


夕暮れが迫る真冬の外はとても寒く、コートを車の中に置いて出たのをすぐに後悔したが、構わず俺は小松の後を尾けた。嫌な予感が当たらなけれは良いのだが、と願いながら……

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