そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

「そう……」


私は複雑な心境だった。愛する人との思い出を大切にしたいというお母さんの気持ちも分かるし、娘に裏切らたばあちゃんの寂しさも分かる。


せめてお母さんが生きてる間にもう一度、二人を会わせてあげたかった……


もっと早く……私が東京に出て来てたら……そう思うと後悔してもし切れない。


すると、心配そうに私を見つめてた社長が何か思い出したのか「あっ!」と声を上げた。


「そうそう!もう10年以上前のことなんだけど、偶然、六本木で久美ちゃんに会ったんだよ。

でね、久美ちゃんは男の子と女の子を連れていて、自分の子供なんだって紹介してくれたんだ。それでね、一ヶ月前、平島へ行って、トメキチさんに孫の顔を見せに行って来たって言ったんだよ。

なんでも、東京で出会った男性との結婚をトメキチさんに猛反対されて、結婚式にも出てもらえなかったから、孫の顔を見せたらトメキチさんの気持ちも変わるんじゃないかと期待したけどダメだったって寂しそうに笑ってた」


もしや、それって、あの時の……


「で、その時、琴音ちゃんに頼まれて、鈴音ちゃんのお兄さんも一緒に平島に連れてったそうだよ」

「えっ?私のお兄ちゃん?」

「うん、鈴音ちゃんのお兄さんが鈴音ちゃんに会いたがってるし、トメキチさんの孫だからトメキチさんにも会わせたいって言われたそうだよ」


思いもよらぬ展開に愕然とする。


うそ……じゃあ、あの二人の男の子の内一人が私のお兄ちゃんだったの?


ということは……


陸さんとイケメン弁護士のどちらかが私の……お兄ちゃん?


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