そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

「そんな……そんなことって……」


ありえない。だって、お兄ちゃんはお母さんを憎んでて、お母さんに似てる私には会いたくないってイケメン弁護士が……


あ……まさか、あれは嘘?私は陸さんとイケメン弁護士に騙されてたの?


「社長、私のお兄ちゃんの名前分かる?久美さんの息子の名前でもいい。知ってたら教えて!」


必死の形相で社長の両肩を掴み訊ねるが、社長は子供の名前までは分からないと首を振る。


「どうしたの?鈴音ちゃん……何か気になることでもあるの?」


心配顔の社長に向かって、今度は私が首を振る。


「……うぅん、なんでもない……」


知りたいと思った。でも、知りたくないとも思ったんだ……


私の中で芽生えた小さな疑問は、いつしか不安へと姿を変え、時間が経つにつれその不安がどんどん大きくなっていく。


私はイケメン弁護士と菜月ちゃんが兄妹なんだと思ってた。でもそうなると、陸さんが私のお兄ちゃんになってしまう。


―――私と陸さんが……兄妹?


うぅん!そんなのありえない!そうだよ。菜月ちゃんのお兄ちゃんは陸さんかもしれないじゃない。


そうだ。まだ私と陸さんが兄妹と決まったワケじゃない……


でも、自分を納得させようとすればするほど、イケメン弁護士の意味深な言葉を思い出し益々、不安になる。


私が二階堂に襲われた後、陸さんと二人で喫茶店で話してたあの会話……


『……言わなくても分かっていると思うが、陸が鈴音を好きになることは絶対に許されないことだ。もし、お前達がどうにかなったりしたら、大変なことになる』


大変なこと……

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