そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
「……胸は巨乳にした方がいい」
「へっ?」
「それに黒のビーチクは、もっと大きくして残念さを強調する。ピンクの方はもう少し色を抑えて初々しさを出してくれ」
えっ?えっ?それって、もしかして……
「OKなんですかー?」
「まだ改善の余地はあるが、まぁいいだろう」
「よっしゃ~!!」
嬉しさの余り社長と抱き合い拳を天高く突き上げ雄叫びを上げる。そして全身で喜びを表現するべく小躍りして歓喜の乱舞。
「アホ踊りはやめろ!勘違いするな。まだ決定したワケじゃない。社に持ち帰って上司と相談する」
「えっ?そうなの?」
な~んだ。喜んで損した……
慌ただしく鞄にビーチクチョコを押し込むと、そそくさと帰って行くおこちゃま詐欺師野郎。新商品の目途が立てば私達は用無しってことか?
不満げに唇を尖らせている私に、社長がニコニコしながら言う。
「鈴音ちゃん、手ごたえ十分だよ。陸君、凄く気に入ったみたいだから」
「はぁ?アレで?」
「陸君ってシャイだからさー無愛想な言い方してたけど、内心はノリノリだったはずだよ。ホントは僕達の踊りの輪の中に入りたかったんじゃないかな?」
すると菓子工場の男性までもが大きく頷き「ホント、彼はシャイだよね~。きっと今頃、スキップしてるよ」って笑ってる。
アイツがシャイだなんて……ありえないでしょ?普段、仏頂面か怪しい笑顔しか見せたことのないあの男がヘラヘラ笑いながらスキップする姿なんて想像しただけで鳥肌もんだ。
アイツは私が21年生きてきて出会った人間の中でも図々しさではトップクラスに入る男。シャイという言葉に申し訳ないよ。