彼の腕の中で  甘えたくて
「どうだった?僕は君にとって期待を裏切らない男だった?」

「今でも震えちゃうわ。」

「夜はまだ長い。君のワインだ。ゆっくり味わってもらいたい。」

「飲み切れなかったら、あそこの中に置いてくれるかしら?」

「もちろん、いつでも飲みに来てくれていいよ。」彼は大人だった。

私より5歳以上年上だと思った。

私を抱く時は強くなく激しくなくがむしゃらでなく、私を丸ごと包んでしっとり感じさせて時間をかけて安心して酔わせるテクニックだった。

1回の濃度が濃すぎて回数ではないことを私の体に教えてくれた。

そして彼の動きをじっくり覚えさせられた。

「君には恋人がいるだろう?なぜ僕の誘いを受けたんだ?」

「たぶん欲求不満だったから。満たしてくれる人が欲しかったの。こんな返事で怒らせてしまったかしら?」

「いや、僕は君が良ければそれでいいんだ。ショーもそうだ。商品の晴れ舞台は作り手の心臓を直撃するんだ。僕にはそれがどういうことなのかちゃんとわかっている。イメージを勝手に着色してはならない。僕はたぶん来々期にはまた移動する。もう一度君の作り出したものをショーにしたい。君の次なるものに今から興奮させられるよ。」

「そうなの?また移動なの?」

「だから君との付き合いもそれまでにしたい。移動したらもう会わない。それでいいかな?」

「期限付きなんて初めてだわ。」

「そういうのをどう思う?はっきり答えてほしいんだ。」

「私には無理かもしれないわ。」

「なぜ?」

「週末は京也と過ごしているから、だから。」

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