彼の腕の中で  甘えたくて
私はランチタイムに外から携帯で前原主任にお礼を言った。

「冷蔵庫に入れてはダメだよ。」

「なぜ?」

「ドアを開けたら庫内のライトが点くじゃないか、光を当てたら色が変わってしまうだろ?」

「じゃぁ、どうすればいいのかしら?」

「決まっているよ。今夜僕と飲んでしまえばいいんだ。」

「やっぱりあのカードはそういうことなのね?」

「僕のメッセージは正確に伝わったようだ。嬉しい。」

「誰が相手でも満たしてくれるってことでしょ?」

「ずい分ストレートに訳したね。それじゃ直訳だ。」

「どこで待ち合わせしたらいいかしら?」

「地下鉄の昇降口で待っていてくれれば車を寄せるよ。」

前原主任のマンションにはワイン専用のボードが置いてあった。

温度設定が可能だった。

プレゼントされたベルベットローズはシルバーのワインクーラーの中で冷えていた。

「乾杯!」

「何に?」

「君と過ごせる今にだ。」

「ロマンチックな言葉ね。」

「変?」

「いいえ、あなたが言うと普通よ。」

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