彼の腕の中で  甘えたくて
「もう一度お願い。凄くいいの。濃度が違うの。もっと覚えさせて。私の中に閉じ込めたい感覚だったわ。あなたの抱き方はまるでベルベットに包まれたようにしっとりできて安心できて心ゆくまで酔ってしまえるの。そんな感じだったわ。」

「そんなに細かく言われたのは初めてだよ。ドキドキしてきそうだ。」

「私のせい?」

「そう、君のせい。さっきよりもっと時間をかけてやってみようか?」

「震えちゃうわ。」

「そういう返事いいね。僕でさえ、クラッとくるよ。」

「あなたとしゃべっていると幸せ感じちゃうわ。なぜかしら?もっとずっと前から知っていたかったのに。」

「君にそこまで言われるとは思ってなかった。僕が君にのめり込む前に移動したいよ。」

「本当?本当にそう思うの?」

「自分の気持ちに正直なつもりでつい油断した。ペラペラと口が勝手に滑って自分でも驚いた。気にしないでいい。」

「でも私はあなたの今の言葉に揺れたわ。」

「じゃぁ、その気持ちのまま僕を感じてくれればいいんだ。わかった?」

私は小さくうなづいた。

彼の目をじっと見つめたまま何かをつかみたかった。

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