しっとりと   愛されて
「百合乃くん、私は週明けからシカゴの支社へ出張だが、今回は1ヶ月と長い。私が不在でもここを頼むよ、いいね。」

「はい、専務。お気をつけて行ってらしてください。」

「私も毎日君に会えなくて残念だ。百合乃くん、君は特別だ。君は唯一私の心を癒してくれる存在だ。」専務はそう言った。

私は専務の目が優しげなのが気になった。

コンコン、とドアがノックされた。

「どうぞ。」専務の太い声が響いた。

「失礼します。堺です。」

「君か。入りたまえ。」

「先日のレポートをお持ちしました。」

「ご苦労。」

孝二さんだった。

「堺くん、彼女は業務部の椿百合乃くんだ。顔くらいは知っているだろ?」

「はい。」孝二さんは私を見た。

「百合乃くん、彼は外為の堺孝二と言ってね、昨年までは私の下にいたんだが、今年だけ外為へ回したんだ。来期からはまた私の下に戻すつもりだ。顔を覚えておきなさい。」

「はい、専務。」私は静かに返事をした。

「堺くん、君は仕事一筋で浮いた話しがないな。ダメだよ、少しは私を見習って何とかせにゃならん。そうだ、彼女はどうだ?君になら百合乃くんを任せてもいい。百合乃くん、恋人はいるのかね?」

「はい、おります。」

「当然だろうな、君ならいて当然だ。堺くんはフラれたな。彼女の恋人が羨ましいな、私は。堺くんは当分仕事が恋人だな、こりゃ。あっはっは。」

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