しっとりと   愛されて
「俺も出張が多くなるよ。君とはすれ違いになる。どうする?」

「どうにもならないわ。」

「寂しい思いをするかもしれない。会いたい時に会えない。君はどう思う?」

「私、専務に言われたの。マーケで実績を積んだら会社を辞めて派遣で渡り歩けって。」

「凄いな。俺は勤まるかどうかわからない。クビになったら百合乃に食わせてもらうよ。」

「専務が孝二さんを選んだのよ、自信を持っていいのに。」

「そうだったな、専務の存在は亡くなった今でも大きいんだ。君は君の道を歩いていってほしい。前ほど頻繁に会えないが、たまに会った時のしみじみ感も味わってみたい。お互い仕事にかまけて相手を見失うかもしれない。」

「私、香川女史の有能ぶりに圧倒されたわ。それにあのお色気たっぷりのいい女でしょ?孝二さんを奪われそうで毎日不安だわ。」

「彼女は俺のタイプじゃないよ。秘書には申し分ない人材だが、百合乃にそう言われたことの方が俺にとっては嬉しい。毎日その言葉を噛み締めているよ。」

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