しっとりと   愛されて
マーケティング部は多忙だった。

私は出張に同行し、通訳をこなした。

専門用語も多く、事前に勉強していった。

部では誰もが英語を流暢に話したが、女の通訳がいるだけでなぜか先方となごめたようだ。

私は第2ヶ国語に仏語を選考していたので、フランスへも同行させられた。

ペラペラしゃべる先方についていけず、課長に重宝がられた。

「椿くんがいてくれて大助かりだったよ。」

今までは先方の片言英語と、当方の片言仏語で何とか通じていたらしかった。

あっという間に上期が過ぎていった。

孝二さんとは春以来会ってなかった。

夏の休暇もすれ違いだった。

秋も深まり、私の帰宅後は以前のフィギュア模型作りに徹した。

秋の夜長にフィギュアに没頭できた。

半年以上もルリルの下半身は未完成だった。

今はコスチュームも仕上がった。

塗装も完璧だった。

「素晴らしい出来だわ。自分の作ったものにうっとりできるなんて。これをネットで流してみようかしら。」

スマホで数枚撮り、ハンドル・ネームを考えていた。

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