しっとりと   愛されて
翌朝、いつも通り出勤した。

「おはよう、いつも早いね、椿さん。」

「おはようございます。」

同じ階にある外国為替部の堺さんとエレベーターで一緒になった。

かなりのイケメンで女子社員に人気だが

彼の堅物で真面目人間共通の冷ややかな雰囲気が女子を寄せ付けなかった。

彼はスタバのコーヒーをすすっていた。

エレベーター内にコーヒーのいい香りが漂った。

「君は業務部だろ?」

「はい。」

「専務は凄腕だ。例え単調な仕事でも、君だけが毎日専務に関われる。男では出来ないことだ。しっかり頼むよ。」

「はい。」私は彼の言葉に驚いた。

私の仕事はお茶くみだった。

専務室のドアは私の席に一番近い。

私は専務専用のメイド係りなのだから。

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