しっとりと   愛されて
専務に呼ばれた。

「百合乃くん、今日は午後3時に外出するから、それまでにいつものどら焼きを箱で用意しておきなさい。先方へ持っていくんだ、頼んだよ。」

「はい、専務。」私は係長に代金をもらい、買いに出た。

外の空気が美味しかった。

まだ午後一だったので、昼休み中のサラリーマンが多かった。

歩きながら考えた。

フィギュアの下半身をどうセッティングするかを。

「やあ、椿さん、専務のお使い?」

「はい。」

今朝、エレベーターで一緒だった外為の堺さんだった。

「午後は専務と外出するんだよ。さては、どら焼きだな?」

「はい、これから買いに行くところです。」

「先方のお姉さん方は甘いものにうるさいからな。」

「そ、そうですか。」

「あそこのどら焼きはいつも好評なんだよ。あのスポンジにはさまれた餡は甘党でない俺でもいけるもんな、君は食べたことある?」

「いいえ、ありません。」

「そう、あの味は一度食べておいた方がいいと思う。どんなに美味しいかってね。」

「私には高価なものですから、食べられません。」

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