しっとりと   愛されて
私は定時にすっ飛んで帰った。

フィギュアどころではなかった。

「どうしよう。明日何と返事をしたらいいのかしら?」

ご飯が喉を通らなかった。

「はっきり断りたいけど、何と言えば失礼にならないかしら?ああ、もぅ、時間ばっかり経っちゃう。今夜も眠れないわ、きっと。また寝不足になっちゃう。」

完璧に寝不足だった。

朝、電車に揺られてウトウトした。

どうしよう、どうしよう。堺さんに会いませんように、って祈ったところで彼はエレベーターの前で私が来るのを待っているはずだ。

自社ビルのエントランスを抜けて、右奥のエレベーターの方へ歩いた。

やはり彼は私を待っていた。

いつものように、スタバのコーヒーをすすっていた。

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