Candy of Magic !! 【完】


そして、ヴィーナスは息を整えてから一気に吐き出すように早口に告げた。



「魔法は触れ合うことで力が増すんだ!特に異性が触れ合った方が効果は高い!意味わかるか?!」



ぜえぜえと息を荒くしてヴィーナスは浮かしかけた腰をドサッと椅子に戻した。

その声量と内容に呆気に取られる。そんな内容今まで聞いたことがない……


ぽかーんとしていたが、ハッと我に返った。



「それはつまり……」

「……交われとは言っていない。あくまで触れ合うのが一番良い方法というだけだ。ミクの力に引き寄せられ、さらにはその力を吸収して姿を現せるようになるだろう。おまえたちが言っていた通り、龍は目に見えないだけで実際にはいるんだ。今は力を蓄えているから視界に入れることはできない」



力を蓄えているため、極力力の浪費を抑えているから目に見えないという。もしかしたら同じ空間の中にいるかもしれないが、龍が俺たちの言っていることを理解しているかは定かではない。

マナは意思の疎通はできるが、あくまでそれは心を通わせることでできる芸当だ。心を介してでしか理解し会えない。


ヴィーナスは幾分気持ちが落ち着いたのか、声のトーンを戻して話し出した。



「紫姫はそのことを知っていた……まあ、元々はフリードが教えたんだが、そのおかげで命の窮地を救えた場面もあった。その方法が……ただ接吻だったということなんだ。だから先入観だけであまりそういう方面で考えるなよ」



そういう方面……と言われて俺は顔をしかめた。ミクには刺激が強すぎる……

カインさんも厳しい表情だ。愛娘が誘き寄せるためにそんな風に利用されるのは、堪ったったものではないだろう。

俺だって嫌だ。それに相手はどうするつもりだ?俺はやらないぞ。



「相手はどうするんだよ」

「それは任せる。感情が昂るのが狙いだからな、本人に嫌な想いをさせたら二度とやるな。そのときはフリードに意地でも聞いて他の方法を吐かせる」



ヴィーナスは鬼のような形相で早口に捲し立てると、ふらっと戻って行った。その証拠にミクの身体はガクッと項垂れる。そしてしばらくすると、ぴくりと首を動かして頭をもたげた。

顔をしかめているから、俺たちの微妙な表情を不思議がっているんだろう。



「ええっと……」



ミクが苦笑いをして首を傾げたから、咄嗟に俺は視線をそらした。

直視できない……申し訳なさで押し潰されそうだ。


相手は……自ずと限られているから尚更だ。ヤトには事前に三角関係から降りると告げてある。その経緯もきちんと話した。彼は驚きながらも本当ですか、と確認したら安堵の表情を見せた。

おまえに……託すぞ。


ヤトを横目に窺えば、引き締まった顔つきでミクを見つめていた。


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