悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~






「着いたぞ」





飛翔の声に次に目を開けた時は、
日の長い夏なのに
薄暗くなり始めていた時間。



「今、何時?」

「20時前だな。
 総本家についた。
 歩けそうか?」


気遣うように話しかける。



「何?
 寝てる途中に何かあった?」

「少し魘されていた」





眠りの為に忍び寄るように
付きまとう、あの黒い影。

声。





眠るのも命がけって言うのも変だが、
まさにそんな状態の中で、
疲労を回復させる眠りなど
得れるはずもなかった。




「夢見が悪い。
 それだけだ……」

「無理はするな」

「飛翔がさせねえだろ」






そう何時だって出逢ってから、
俺が無理しそうなときは
傍に居てくれた。




「行くぞ」




ドアを開けて、
総本家へと続く道を歩いていく。



俺の後ろ、車の鍵を閉めて
飛翔も歩いてくる。



総本家に使えるものが、
俺たちの姿を確認すると、
順に頭を垂れて出迎えていく。




「突然、お呼び立ていたしまして
 申し訳ありません。

 奥の別宮にて、
 後見様がお待ちです」



万葉がそう言うと、
ゆっくりとお辞儀をして、
俺と飛翔をその場所へと誘った。




別宮と呼ばれる、
その場所は、徳力の母屋の奥に立つ
神殿から繋がる空間。



その場所に入るものは、
殆どいない。




何故、その場所で……。






疑問を感じながら、
歩き続けた先、
華月とその隣に
控える男の姿を視界にとまった。 




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