悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~

13.閉ざされた意識



「神威っ!!
 起きろ、神威」


朝、外からの声が聞こえた俺は
怠すぎる体を必死にコントロールしようと
もがきながら目を覚ました。




俺の覚醒と同時に、
脈を辿るように伸びてくる手。



そのまま安堵したように、
ベッドサイドに座り込んだ。




「あれっ。
 桜瑛は……?」




思わず呟く。




「秋月の客人ならそこ。
 お前の足元で寝てる」



飛翔の言葉に桜瑛を一目見たくて体を動かそうとするが、
その体は思い通りに動いてくれなかった。



「ほらっ」



そう言って俺を介助して抱え起こしてくれると、
俺の足元、ベッドに頭を預けて静かに寝息をかける桜瑛がそこに居た。


肩からは飛翔がかけたであろう
毛布が羽織らされてあった。





「どうして?
 飛翔が?」




玄関前で倒れた俺が
今、ベッドに寝かされている。



そして目の前に居るのは飛翔。



確か飛翔は仕事だったはずなんだ。




「俺がここに居る理由か?
 秋月のアイツ。

 アイツと暁華は同級生。
 お前を運んだのは」





アイツの父親……。




「俺の職場に電話してきて受話器の向こうで叫ばれた。

 『神威を助けて』ってな。

 デカすぎる声は、俺だけじゃなくて
 医局のヤツラにも聞こえてな。

 オペは押し付けてきた。
 送り出してくれたからな」



そう話す飛翔の表情は信頼できる仲間との絆に
喜ぶようだった。



「そっか……」

「何があった?

 今はバイタルも落ち着いているが、
 一時期は触れることさえ出来ないほど弱くなった。
 本気で神前への搬送を考えたぞ」



そう言いながら隣に座り込んだ飛翔。



「由貴も心配してた。

 またあの頃みたいに眠れなくなってたら
 一服盛らせなって、ご丁寧に薬まで処方してくれたぞ」



そう言いながら、
飛翔は由貴先生から持たされた薬袋を俺に見せた。
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