悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence



須王依子がある日、外出から帰宅して自宅で倒れているところを
父親が発見。

原因不明で眠りっぱなしなのだと言うこと。





「華月、柊と連絡はとれるか?」

「今、確認いたします」




そのままファイルを更に読み進めると、
そこには、譲原咲が消えた情報と先の母親のことが綴られていた。



咲の母親が住む住所を、携帯電話に打ち込んで地図を調べる。






「ご当主、柊佳殿は今は八城【やつしろ】にいらっしゃるそうです」

「八城?
 咲の両親の家の近くだな」



今調べたばかりの住所を辿る。



「柊と桜瑛に18時に八城で合流したいと連絡を頼む。
 調査資料を開示して、お互いの意見を聞きたい」

「お伝えします。

 さっ、ご当主。夜からお務めになるのでしたら、
 今はご無理は行けませんわ。

 一族への代行は私共が。
ご当主は、もう暫くお部屋でお休みください」

「万葉、夕方鷹宮まで車を出せ」

「はいっ。ご当主」



万葉はそう言うと、深々とボクに頭を下げる。



再び自室に戻ったボクは、
先ほどと同じように、精神を集中して何度も何度も
鬼の軌跡を辿ろうと試みる。




何度も何度も挑戦するものの、上手く行かなくて
ふと、ベッドで力を抜いて眠りについたその時、
不思議な感覚がボクをあの世界へと連れて行く。








見知らぬ世界の中、
鬼は消えた女の子を必死に守ってた。


消えた女の子の傍には、
鬼の存在を知る、もう一人の鬼。




その鬼と少女の傍から、逃げ出すように
去って行く鬼。





……ボクの血はもう赤く染まっている。
その罪は親友を殺したその日から消えることはない。
だったら……咲を悲しませる存在をボクは今一度……




★ 



そんな意識が流れ込んできて慌てて飛び起きる。
何時の間にか、ベッドサイドの時計は16時30を告げる。





あの鬼は……あの咲の母親を手にかけるのか?







何となくそんな風に思ってしまった想いは、
簡単に消せるものではなくて、
ボクは慌ててベッドから飛び起きてリビングへと向かった。






「華月、万葉、今すぐ鷹宮まで車を出せ。
 柊と桜瑛にも、譲原咲のの母親の自宅へと向かわせろ。

 後、鷹宮の飛翔にすぐに連絡をとれ。
 アイツも一緒に連れて行く」



声を荒げて姿を見せるボクに、
驚いたように華月と万葉対応する。



「時間がないんだ。
 早くしなきゃ、間に合わなくなる。

 今のボクだけじゃ、あの者たちを助けられない」



そうやって叫ぶと、二人はすぐにボクが動きやすいように準備してくれる。


鷹宮までは万葉の運転で向かって、
鷹宮で職場まで入っていって、飛翔を見つけると、
そのまま白衣姿のアイツの手をひいて院内から連れ出す。

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