悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence



ヘリに同乗してきた時はそんなに遠さを感じなかった飛翔の故郷も、
高速を使って走ると、距離感が身に染みる。



眠さに時折仮眠をとりつつ、SAのガソリンスタンドで、
もう一度給油を挟みつつ何とか辿り着いたのは、深夜3時をまわりそうな頃だった。



そのまま金城の家に帰って、時雨の邪魔をしたくなかったので
私は勇の鷹宮の部屋へと転がり込んで、ソファベッドの上で爆睡した。






「おはよう。
 勇人、帰って来てたんだ」



そう言いながら姿を見せたのは、
鷹宮千尋【たかみやちひろ】君。


勇の四か月しか違わない弟って言ったら言い方はおかしいんだけど、
養父母の実子にあたる。



「千尋、おはよう。
 なんか、肩がはっちゃってバキバキだよ」



そんなことを言いながら、肩をグルグルと回しながら隣の部屋から姿を見せる勇。



「あれっ?
 
 あぁ……ごめんね。
 氷室が泊まってたんだね」

「昨日遅かったから、由貴とそのまま部屋に倒れ込んじゃった」

「飛翔の甥っ子は兄さんの病院で目を覚ましたって。
 近日中に、うちに転院してくるって父さんが、政成叔父さんと話してたよ」

「そうなんだ。
 情報有難う。
 
 後で、飛翔にも連絡とってあってくるよ」

「そうだね。

 でも……今日何の日か知ってる?
 合格発表あるけど」



千尋君の声に、私は勇と思わず顔を見合わせた。


バタバタしててすっかり忘れてた。



「だと思った。
 これ新聞に掲載されてた合格者の受験番号」



千尋君が広げた新聞紙を食い入るように数字を追いかける。



「僕は合格してた」

「あっ、僕の番号も見つけた」


千尋君の後、勇も言葉を続ける。


私の中の焦りが、
数字を追いかける視線の先を惑わせる。


ようやく見つけた受験番号。



「見つけました……」




そう言葉を続けたと同時に、
ずっと高三の頃から思い続けていた妃彩さんと、
亡くなってしまった時雨の弟、氷雨のことを思い浮かべた。
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