悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence




髪を乾かすのを中断して、慌てて母さんの方に駆け寄る。
そのまま明日からお世話になる、鷹宮へと電話を一本入れる。




「はい、鷹宮総合病院」

「すいません、明日から研修でお世話になる早城です」

「おぉ、勇人の友達だったか。
 どうした、今、安田だ」



安田……そう名乗ったその人は、
勇が嵩継さんと呼んでいる兄貴分。



「嵩継さんですよね。
 勇から話を伺ってます。

 今、キッチンで母が吐血して倒れました。
 鳩尾を何度も抑えてたので、ストレスが原因だと思うんですが
 救急、受け入れお願いできますか?」

「あぁ、すぐに連れてこい。
 スタッフ集めて待機してやる」



了承を得た後、俺はすぐに救急車を呼び寄せて
母さんを鷹宮へと搬送する。


処置室で待つ間に、鷹宮邸から姿を見せた勇人が
俺の隣のソファーに座る。



「飛翔……」



ただ俺の名を小さく呼ぶ勇。



すると処置室のドアが開いて、
嵩継さんが姿を見せる。



「おぉ、勇人来てたのか……。

 早城、状態を説明する。
 中入って来い。

 勇人も早城の承諾があれば、入っていいぞ」


嵩継さんの言葉に、勇は俺に視線を向ける。


一緒に入れと告げるように、視線をうつすと
勇も慌てて処置室の中に入った。


モニターに映し出される映像。



「胃潰瘍だな。
 明日、腹腔鏡を使って孔を塞ぐ。

 おふくろさん、入院でいいよな」


くっきりと出血が続いている様子が映し出されたモニター。
胃の中もストレスによって荒れている様子が映し出される。



「すいません。
 母を宜しくお願いします。

 俺、入院手続きしてきます」


そのまま処置室を後にして、入院手続き。

その後、父さんと華月に連絡を入れて
母の病室へと付き添う。


そんな俺の傍で、勇も同じように行動していた。




「勇、少しだけ母を頼めるか?
 明日の準備だけしてくる。
 
 母の入院の必需品もあるだろうしな」


そのまま病室を後にして、マンションへと戻ると
明日の準備と、母の入院用のアイテムを一式鞄に詰め込む。



キッチンでは、作りかけの夕食の食材がまな板の上で放置されている。


それらを袋に入れて、冷蔵庫に片付けると
流しを軽くだけ洗って、再び鷹宮へと愛車を走らせた。



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