捨て猫にパン
「真琴…?」


「陣…」


陣は何も言わず、ただあたしを優しく抱き締めてくれた。


これでいい。


陣のこのぬくもりに嘘はないから。


この愛に身を委ねよう。


この優しさに想いを重ねよう。


きっと見えるよね?


2人の未来。


「真琴、朝までいい?」


「…うん」


抱きかかえられて1枚1枚剥がれていく服の温度に寂しさを感じる。


重なる体は2人なのに、心は独りぼっち。


「真琴…」


「陣…」


「愛してるよ」


あたしも…って言えない、こんな時ばかり正直な自分が嫌い。


それでもあたしは陣に抱かれたい。


全部、忘れさせて。


消えてなくなるように。


激しく、抱いてください…。
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