捨て猫にパン
───バタンッ!!


車のドアを閉めて、あたしは走った。


止まらない涙も拭わず、追ってくる自分の気持ちを振り切ろうと走った。


───ガシャン!


足が絡まって、転んだ拍子にコンビニの袋に入ったカクテルが転がった。


「…っ…っ…!」


やっと欲しかった言葉をもらえたのに。


心を、体を引き裂くような胸の痛みにまかせて、ただ泣いた。


手の甲をがむしゃらに噛む。


この痛みがどこにあるのかわからなくなるように、強く、強く。


「真琴…!!」


前から駆け寄って来た陣の声を無視して、泣きながら手の甲を噛む。


「遅いから心配した。アイツと…会ったんだな?」


「…っ…っ…!」


陣は泣きながらアスファルトに座り込むあたしを包んでくれるだけで、何も責めようとはしない。


「俺はオマエを離さない。だからさ、泣くな。帰ろう」


カクテルを拾った陣は、血の滲んだあたしの膝を見ておんぶしてくれて。


「帰ろう」


もう一度言うと、アパートまでそのまま歩いてくれた。


部屋のベッドには酔って寝てしまったメイ先輩がいて。


陣はあたしの膝を濡れたティッシュできれいに拭いてくれると、ただ笑ってこう言った。


「おかえり、真琴」
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