LAST SMILE



しんと、静まり返る。


亜貴が、
初めて“祐兎”って言った・・・。


磯部くんと武田くんもびっくりして、
亜貴を見つめていた。


ピリピリしてる。


あたしのせいで、
この不穏な空気が流れてる。


あたしは居づらくなってスタジオを飛び出した。




「麗華!?」


亜貴の声を背中で受け止めながら、
あたしは外に出た。





もうすぐで、クリスマスだ。



寒い。



どうしてこんなに寒いんだろう・・・。




どうしてあたしはこんなにも・・・。








雪が降ってきた。



今年の初雪。



「なんで雪なんて降るんだよ。馬鹿」


誰にともなくそう呟く。


雪は、冷たく、
あたし自身に静かに落ちてくる。





どのくらい、この雪の中にいたんだろう。



寒い。



だけど、寒くてもいいや。




あたし、今最低なやつだ。




練習台無しにして、
勝手に飛び出して、迷惑かけてる。




こんな最低な奴、
この雪に埋もれちゃえばいいのに・・・。





お願い。





あたしの汚い心を隠して・・・。





近くの公園のブランコに座る。


もうすでに、雪が積もっていたけど、
構わずに座った。



手の感覚がもうなくなってきてる。



みんな、練習してるかな?


あたしなんか構わずに、続けてるかな?



そうしたら、祐兎が歌うよね?



だってあいつ、
もう治ってるんだもん。




あたしなんかいなくたって・・・。



そう思ってたときだった。






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